特産品と名産品の違い

2017年8月3日コラム(読み物)

保命酒銘菓(鞆の浦特産「保命酒」を使った菓子加工品)

特産品と名産品の違いについて、境界はあいまいな部分も多いですが、端的に言うと以下のようになります。

  • 特産品・・・その地域でしか作れないもの(その地域特有の風土や原料を使って作られたもの)
  • 名産品・・・その地域で作られることが広く知られているもの(よその地域でも作ることが可能または実際に作られているが、知名度で優れているもの)

※「特産物」「名産物」という呼称もあります。この場合は「特定の地域で採れたもの、その地域で採れるものが特に著名なもの」と、産出物そのものを指して言う場合に使います。ただし、一般的には産出物も、特産品、名産品という呼称でひとくくりに表現されることが多いです(例:広島名産レモンやみかん等)。

ちなみに、古代日本では奈良時代に風土記(国内地域別に、風土や歴史伝承、名称などをまとめたもの)を製作するにあたり、地域の特産物を記すことが既に義務づけられていたそうです。

(上の画像は鞆の浦特産「保命酒」を使った菓子加工品群・保命酒銘菓)

特産/名産を広島の土産物で分類すると?

特産品・名産品の具体的な例を挙げます。例えば、広島県(瀬戸内)のお土産品で分類してみるなら、以下のような区分けになると思います。

  • 特産品・・・広島菜(加工品)、西条酒(東広島市西条で作られる日本酒)、保命酒、府中みそ
  • 名産品・・・もみじ饅頭、お好み焼き、しゃもじ(木製)

上記の例をもう少し詳しく解説すると、広島菜は主として太田川流域の川内地区および広島県内で生産されているものを漬物として加工します。名称からして広島の風土が育んだ産出物の加工品ですので、広島菜は広島ならではの特産品、と言えます。

また保命酒は福山市鞆の浦にある保命酒蔵元が作る薬味酒ですが、江戸時代から続く歴史のある製品であるため、鞆の浦ひいては福山市(江戸時代は備後福山藩)の歴史からも切り離すことができない品です。

さらに保命酒は16種類のハーブを良質のみりんに漬け込んで作られます。製法の詳細の一部は蔵元秘伝であり、製造の歴史背景なども上記の通り唯一無二であるため、今後鞆の浦はおろかその他の地域で保命酒を作ることは出来ません(味や見た目を似せただけの類似品は除きます)。

ですので、保命酒も正真正銘、広島県の特産品です。

保命酒と同様に、府中市の「府中みそ」や「西条酒」も同様、広島ならではの風土・歴史背景に育てられた特有の製品、つまり特産品です。

一方、名産品についてですが、例としてもみじ饅頭と言えば「広島」を連想する方がほとんどかと思いますが、もみじ饅頭自体は広島特有の原料をしているわけでもないので、よその地域でも作られます。だから、冒頭の定義的には、名産品に該当します。

ただし、「もみじ饅頭といえば広島」というイメージが定着しているため、よその地域で作られたもみじ饅頭を見ても「広島」のことが頭に思い浮かぶ方も多いかと思います。

こうなるともはや、もみじ饅頭は広島の特産品、といってみても差し支えがないと思います。

同じように、お好み焼きも全国どこででも作ることが可能ですが、重ね焼・乗せ焼のお好み焼きと言えば広島のお好み焼き、という認識が定着していることから、広島のお好み焼きは特産品であるといっても過言ではないかと思います。

つまり、全国津々浦々に存在する名産品は、解釈次第で特産品とも言えそうなものが大半を占めているということです。

名産品が、特産品に

特産品が名産品となることは稀ですが、名産品が特産品となることは多々あるようです。

上記の通り、もみじ饅頭は(広島県人のスタッフから見て)既に特産品と言える品だと思いますし、数年前にブームとなった「B級グルメ」の品々も、地域定着に至ったものについては特産(厳密にいうと、名物になる?)と考えてもよいかと思います(※)。

※名物とは、その地域の名産品に行事や慣例などの物事(ストーリー)があるものを指します(例:古くより牛馬の流通拠点だったことから牛肉の流通がさかんで、牛肉の料理、ホルモンを使った料理が昔から食べられていたことに端を発する岡山県津山市のB級グルメ「津山ホルモンうどん」など)。行事や慣例のみを指して言う場合もあります。

以上、取り留めのない話でしたがご参考の足しになれば幸いです。